ヒビムシ 4-03

再度山:ホシホウジャク

沢田佳久

 秋めいてきた6日,久しぶりに六甲山頂に行くことにした.ところが道路が途中で通行止めになっているではないか.特に目的があるわけでもないので,すごすごと変更,再度公園に行くことにした.どっちにしても水曜日なので混んではいない.で,それを今回もその日のうちに書いております.

 自慢げに無料と書かれ駐車場に停めて,さっそく修法ヶ原池の周りを歩いてみた.しかし虫が少ない.日差しは強いが気温は低いような気もする.そのためだろうか.しかしそのような時には日向ぼっこをしている虫がいるものなのだが,それさえ見かけない.薬でも撒いたのか? 紅葉が売り物の公園だからな(疑).目に付くのはイノシシの痕跡ばかりである.そこらじゅう耕しまくってあるのだ.池の近くで「イノシシの餌付け禁止」の貼り紙をみた.そんな人がいるのか(驚).

 やっと虫を見つけた.センチコガネが飛んでいる.低く一目散に飛んできて,ある地点でホバリングし,着陸した.その着陸に驚いて先客らしいハエが二匹ほど飛び立つのが見えた.希望の場所にピンポイントで降り立ったようだ.なかなか上手いぞ.
 さっそく近寄って覗き込んでみたが,何が誘引源だったかがよく分からない.糞か何かがあると思うのだが土と同化していて人間には見分けがつかない.
 そのセンチコガネは数秒間で何かをチェックし終えて,また飛び立とうとした.判断がテキパキしててスマートだぞ.しかし離陸は失敗して仰向けに転がっている.カッコ悪るっ.その姿をありがたく撮影した.中々起き上がれないので木の棒で助けてやったらすぐ飛んでいった.離陸の瞬間を撮ろうとしたのだが,それはミスった.


ヘリヒラタアブ 立体写真の見方

 細いハイキングコースに入ってみると,コウヤボウキの花が咲いていた.そして薄色のアブが一匹だけ来ている.青白い帯のヘリヒラタアブである.花に惹かれてるようなのでこちらも地面に座ってゆっくり撮影することにした.できたら空中で撮りたいのだが,けっこう素早くてこずった.そのうちに,人を嫌ってか,居なくなってしまった.仕方ないのでコウヤボウキの花とツーショット的なやつをここに掲載.
 ヘリヒラタと交代にもう一匹,細いアブが空中に浮いていた.ハラボソツリアブの類いである(帰ってからニトベハラボソツリアブと同定).この仲間は飛行姿勢に特徴がある.長い後脚を垂らして空中をふわふわ浮かぶのである.交尾したままの♂♀が逆方向を向いて空中を漂っていることが,よくある.多いときには花のまわりに何ペアも居る.秋に見かける奇妙な光景である.ただ今回は一匹だけのようだ.こちらはじっくり何枚も撮った結果,ほぼ当たりの空中浮遊像を得ることができた.


ニトベハラボソツリアブ 立体写真の見方

 この場所の地面は花崗岩の崩れたもので出来ている.小石がまじっている.その上を歩いているカメムシに気づいた.歴とした成虫なのに飛ばずに移動している.越冬場所を探しているのだろうか.土で汚れてちょっと違う感じに見えたのだが,クサギカメムシだったようだ.今,写真を見直してガッカリしている.ごく普通種で家の中に冬眠しにきて間違って圧死して臭がられるやつだ.
 水位がほとんどないキショウブの群落の辺りにもカメムシが居た.こちらはあまり見かけないトゲカメムシだった.動きが鈍いので,茎を持って良い角度で撮影.続いてコバネイナゴも同様.これにはジャンプして逃げられた.
 伐採木の樹皮に,見かけたことがない(憶えてないだけかも)ハエが居た.ぜんぜん逃げる気配なく何枚も撮れた.しかし暗いこともあって翅脈がよく写っておらず,科もわからない状態.標本がないとだめだ.


トゲカメムシ 立体写真の見方

 どうも虫が少ないので,植物に目が行く.グミが一株,細い花をたくさん付けていた.秋に咲いて春に実になる,ナワシログミである.花でも撮っておこうかな,花に潜り込んでいる虫はいないかな,とゆっくり見ていると,大きな虫が飛んだ.ホウジャクの仲間だ.空中に静止しているので気づかなかったが,数匹いる.
 ホウジャクは,たぶん「蜂雀」で,蜂みたいな飛び方の雀蛾である.「ハチドリみたいなガ」と説明したほうが分かりやすいかもしれない.前々回,そして前回も図示した巨大芋虫はスズメガ類の幼虫だった.スズメガ類は蛾らしい蛾であり,たいてい夜行性なのだが,中に昼行性の一群がいて,それらがホウジャクの仲間なのだ.日本にも数種類いて,今日のは斑紋からみてホシホウジャクである.
 このナワシログミの株は丸い樹形で密に茂っており,中の方にも花を咲かせている.ホシホウジャクは小枝の隙間を縫って中へ外へと行き来しつつ,良い花があるとその前でホバリングしながら長い口吻を伸ばして蜜を吸っているのである.
 そもそもかなり大きな虫だし,胴体に白帯,後翅にはオレンジ色の部分があって動くと目立つのだが,空中に止まっていると風景に溶け込んでしまい,その存在に気づけない.


ホシホウジャク 立体写真の見方

 追いかけて撮れるものではないので,適当な位置で構えて,巡回して来る個体を待つことにした.甘酸っぱい妖しげな匂いが漂っている.遠目に設定したレンズに交換.待ちながら撮影方法を考える.
 ファインダーをのぞいてピントを当てる,というチャンスはなさそうで,目分量の距離で当てずっぽうに撮るしかない.普通にストロボで撮ると一撃のあと少し間が空いてしまう.ストロボなしで連写する手もある.カメラを近づけつつ連写すれば,どれかにピントが当たっているだろう.
 この二つの方法を何回か切り替えて撮影を試みた.成果品をチェックすると,40分ほどねばって,600コマほど(うち約550コマが連写分)撮ったようだ.そのうちマトモなのは10コマほどで,連写のは全滅だった.

 なお,今回も思いがけずツクツクボウシの声を聞いた.先々週,これがラストかなと思って記録したのに更新である.時計を見てると15:10頃,十数秒だった.何だかハズレにハズレた一日だった.

- ヒビムシ秋編 2015年10月21日号 -

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

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