ヒビムシ 4-11

三木山森林公園:ムラサキシジミ

沢田佳久

 12月2日,また暖かくなったのに,今日も昼からは曇りがちになり,夕方から雨だぞとの天気予報が出ていた.脅迫観念に押されて向かった三木山森林公園での虫のことを書きます.

 この公園にも「蝶の壁」的な環境がある.しかも長めに,俯瞰で.冬にルリタテハを撮ったことがあるのを思い出し,今日もこれに沿って歩くことにした.上々の陽気で,気温も上がっている.

 赤いボケの花が咲いていた.いつも咲いているような気がする.モチツツジの狂い咲きもあり,こっちも例年のことである.
 葉が落ち始めて透けすけになったブッシュの,蔓植物の茎にピンクのテープを巻いてあり良く目立つ.何なんだろうと気になった.特徴のある実が成っていてビナンカズラだとわかった.テープは柴刈りに際して「これは残せ」のサインだろう.ビナンカズラではキベリハムシが発生するので,公園として育成枠なのかもしれない.もちろんそれ目的かどうかは不明だが.


ムラサキシジミ(開) 立体写真の見方

 そしていたいた.ムラサキシジミが岩に止まって日光浴をしている.開いた翅が美しい.しめしめ,とりあえず3Dコンデジを取り出して3メートルくらいの距離から撮影する.そしてじわじわ距離をつめながら数枚撮ったところで飛び立った.
 しかし近くのサルトリイバラの葉に止まり,そこで翅を開いている.それを狙って数コマ撮影.こんどは通常の虫用カメラに持ち替えて接近.射程距離に入って撮影し始めたら翅を閉じた.ストロボを足しているので,そのプレ発光に反応するようだ.しかたなく翅を閉じた姿を撮り,開いてくれるのを待つ.そしてすぐに開いたところを撮影,のはずが,撮れたのは離陸しつつあるブレブレの画像である.ムラサキシジミはそれっきり姿を消したのであった.


ムラサキシジミ(閉) 立体写真の見方

 ムラサキシジミは珍しい蝶ではない.翅を開いている個体に思いがけず遭遇し,撮影意欲をそそられるのだが,たいてい逃げられてしまう.非常に歩留まりが悪い蝶だ.
 翅を開いているということは活動状態であり,その状態の彼らは非常に敏感なようだ.人間の動きを十分に感知していて,余裕で飛び立つ.少し離れた高い位置に止まって人が立ち去るのを待っているフシもある.それを自撮り棒で撮ろうとしたこともあるのだが … いつも悔しい思いをさせられる.
 裏側は暗めの褐色,越冬仕様の枯葉迷彩である.越冬成虫は集団になることもあるという.鈴なりだそうだ.しかしその場面に出会ったことはまだない.

 ほかに蝶は何種かいた.キチョウ,ではなくてキタキチョウは二匹でバトルしていたし,ヤマトかルリシジミ,何だかセセリの一種も一瞬見た.


ツマグロキンバエ 立体写真の見方

 何タンポポか確認していないが,黄色い花もいくつか咲いていて.アブというか双翅類が少しいた.いちいち止まる派(前々回)のツマグロキンバエだ.
 ハエなのかアブなのか? そもそもハエとアブは違うのか? 違うとしたらどこか? 分けるとしたらどうすべきか? それらをきちんと書く意欲がない.そんなことよりツマグロキンバエが美しい虫だという事を強調しておきたい.花に来る,どこでもよく見かける普通種である.腐ったものに集まるキンバエのイメージとはかなり違う,ぜんぜん不潔ではない虫である.
 遠目には暗い色の小さめ蝿に見える.しかし寄ってみると頭というか眼から胸,そして翅へのラインが滑らかな洗練された形状をしているのがわかる.この種は左右の翅を重ねるような独特の止まり方をする.そしてその翅の先が黒いことも,優れたデザインを強調するのに寄与している.
 口は舐めるタイプである.写真は身づくろいしている様子で,口を伸ばすとかなり長いことが分かる.滑らかな体型も込み入った花に分け入るためだろう.
 さらに細かくみると体には渋めの金属光沢,眼には縞模様があって,これぞ天然の造形美,だと思う(「複眼」などと合わせてググると細部の写真がたくさん見つかります).

 花ではベニシジミを何匹もみた.これまた一年中みかけるド普通種である.掲載しようと思いつつ,いつでも撮れるしと思いつつ,まだだったやつだ.なのでそろそろ今回.
 最初のうちは鱗粉おちぎみの子も撮ったが,しだいにピンピンの個体を選んで狙うことにした.天気が良すぎて白い花は上手く写らない.なるべく黄色いのでお願いしたいのだが,そう都合の良い組み合わせは成立しない.けっきょく白い花で,しかも朽ちた花も写りこんでいるカットを掲載することに.


ベニシジミ 立体写真の見方

 フユシャク関連の虫も,よく見かけた,落ち葉を蹴散らしながら歩くと,何匹も飛び立つことがあり,着陸したところを撮影した.現場では同じベージュ色の蛾にしか見えなかったのに,あとで画像を調べると,クロスジフユエダシャク♂(冬編第1回)とナカオビアキナミシャク(前回)が混じっているではないか.
 芝生の広場の縁に,イロハカエデが植えてあってさぁ見ろとばかりにベンチが設置された場所がある.そこの紅葉は終わりかけていた.ここのはナカオビアキだった.
 一方,ウメの木の辺りで追いかけまわしてやっと撮ったのはクロスジ.暗くなりかけてから行ってみたいつものルート(夏編第5回),養成用花壇のある広場のコナラ大木の下からたくさん飛び立ったのもクロスジだったようだ.このあたりはタカノツメの独特の明るい広い黄葉が目だった.

- ヒビムシ秋編 2015年12月16日号 -

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

inserted by FC2 system