マダガスカル回顧日記

(公開版)

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 この回顧日記は何日も(帰還後半月ほど)かかって,写真を見ながら,撮影日時をチェックしながら,思い出しながら書いている.基本的に時系列順にまとめたが,複数日にわたって関連する事項を特定日にまとめて記入した部分もある.
 と,自分用に纏めたのだが『月刊むし』に書いた報告記事の補足詳報のためにWEBにも貼り付けておくことにした.で,それ用に加筆削除.
 「それ用に」とは,1)同様の事を企てている方への参考になる事を掲載する,2)まずいことを消す,まずくない程度にぼかす,という事である.あと,にぎやかしにFB的画像.


【準備】

 ビザ申請を旅行会社がしてくれるらしいので,パスポート等を早めに用意する必要があるらしい,このテのツアーへの参加は初めてなので,そのこともよく分かってなかった.

 旅行カバンの適当なのがない.神戸に出た際にいろいろ見ると,合わさる部分がチャックのものと板のものがある,前者なら1万円以下であるが,後者だと1万円以上する.切り裂き易さという点でぜんぜんちがう.リサイクルショップで板型のものをさがすことにした.ところが頼りにしていたリサイクルショップがなんと夏休み.生協でたぶんデザインの悪さから売れ残っていた新品を買うことにした.これは中々のヒットだった.

 多少は外貨を持っていく必要があると思った.三宮付近に外貨取り扱い銀行があるので,行こうとすると,阪急三宮東口の金券ショップでやっていた.米ドル50を頼んだら$100からだと言われ承諾.ミックスで渡してくれた.$50札は使いにくい事を後で感じた.

 マダガスカルの宿舎の電源の状況が分からない.梅田ヨドバシの海外電源コーナーでもらった冊子ではマダガスカルは3タイプ,電圧も2通りある.それに従って万全の準備をした.旅行会社からの情報では1タイプだけだが…
 大きなダイソーでも海外用コンセントのアダプターを売っている事を後で気づいた.梅ヨドで買ったものの幾つかはかなり高かったと知る.

 採集道具を旅行カバンに入れるのに苦心した.ビーティングネットの竿は百均の伸びる棒でいくことにした.土篩い用のザルとトレーも持っていくことにした.蚊取り線香と醤油とラー油.


【8月24日】

 時間が読めなかったので,念のためにものすごく早く家を出た.三宮から関空行きの空港バスに乗った.荷物にタグをつけてくれた.以前は(伊丹行きでは)無かったように思う.
 関空の降り場に第一と第二があるらしい.「国際線ターミナル」としか認識していなかったので困惑した.結果から言うと第二はLCCのピーチだけのターミナルであり,普通の国際国内線は第一なのだった.

 とうぜん早く着きすぎたのでコインロッカーを探したが,適当なのが空いてなかった.荷物を引いたまま鰻丼定食みたいなのを食べに入った.お店は荷物扱いに慣れていて,入り口のところに置くように言われた.郵便で送るつもりだった予定表を写メにして送信.集合時間まで余裕があったので,できるだけ粘りたかったが,客が増えてきたので退散.
 関空にもダイソーがある.覗こうとしたが,荷物が邪魔で入りにくかった.旅行用品がいろいろあったが,何も買わず.

 タイ航空のチェックインが始まったので荷物を預けて,また散策.集合時間直前に行ったら関空集合の三人の方(藤田,平尾,高橋)と無事遭遇できた.かるく挨拶して三人のチェックインを待ち.筆者は初心者なので彼らのあとに続いて,一緒に出国手続きを通過,ニュートラムみたいなので移動するのには驚いた.

 タイ航空は747ジャンボジェットだった.懐かしいというほど何度も乗ったわけではないが,懐かしい.
 乗ってみると内装は想像以上に新しかった.各席にタッチパネル液晶がついていて,ビデオやゲームができるようになっている.ケーブル付きのリモコンがあって,裏側にキーボードがついている.最近はこんななのかと驚いた.そこそこ時間つぶしになった.

 バンコックでのトランジットは藤田氏がよくご存知らしく,あとに付いていくとマダガスカル航空の乗り継ぎのカウンターに到達した.
 列ができているが,混乱しているようだった.航空会社の人が来て整理すると,すぐ手続きできた.時間があるのでトイレやら飲み物やらしつつ搭乗カウンターへ向かうと成田組の3人(雫石,神坂,板垣),とベトナムからの1人(丸山)と遭遇.
 ドルを少しだけ両替して飲み食い.バーツは硬貨の額が分かりにくいというか読めない.空港内の各所に Free Wi-Fi みたいな表示があるのでいろいろ試してみるがつながらず.パスワードを購入することで使用できるもののようだ.

 マダガスカル航空の期待はエアバス(Airbus A340-300)だった.やはり席にはタッチパネル液晶があったが一世代古く,解像度が低く操作性も低かった.エールフランスの装備やソフトを流用しているらしく,選択しても使えない機能がたくさんあった.クイズ問題で「Q.最初に動力飛行したのは? A.×アメリカ人,○フランス人」みたいなのがあった.

 あいかわらず機内食のバターがおいしい.

 赤道を越えるあたりでアナウンスがあって,初めての南半球だと気づいた.帰ってから海関係の人と話していると,船では「赤道祭」というのをやるらしい.
 ついでに書いておかねば,日本とタイで2時間,タイとマダガスカルで4時間の時差がある.

 機内食に羊羹状のものが出た,角型の粽といってもいい.そのときは何とも変なお菓子だと思ったが,これはお米の国,マダガスカルならではの食べ物だったようだ.

 アンタナナリブに着いたのは夜.気温が低いといわれていたので注意していた.機内で示される外気温が「59°F」なので,℃に変換して想像できなかった.念のため雨合羽を羽織って外に出たが,さほど寒くなかった.
 機体からターミナルまでがバスのピストン輸送なので,これに時間がかかった.

 荷物を受け取って,ガイドのセルジュ氏らと対面.日本語がよく通じるので安心した.てきぱきとバスに荷物を積んでホテルへ.
 あらかじめ両替してくれていた5000円分の現地通貨(約十万アリアリ)を受け取る.\5,000 → 102,500Ar いくついかの絵柄はネイチャー系だった(虫はなし).

 「単独部屋希望」にしていなかったのが二人だったようで板垣氏と同室に割り当てられた.以後ずっと同室となる.話を聞いてみると板垣氏はフィリピンのカタゾウ採集や,ニューギニアのホウセキゾウ採集にもくわしいベテランらしい.いろいろと教えてもらえた.行きさえすれば両方ともチョロイようである.
 他の人はほぼ全てチョウ屋さんで,神坂先生(外科の先生)はトンボ主体でチョウも,という感じらしい.ネットは四つ折り枠で赤の粗い網とスーツケースに収まる繰り出し竿または継ぎ竿という方が多く,板垣氏は自分で染めたオレンジ網で長め竿を別の竿袋に入れている.
 筆者はスイープ用の四つ折りと伸縮式のビーティングネットをスーツケースに詰め込んで来た.

 アンタナナリブ第一泊めの宿は中国系らしく,電気製品を含めいろんなものが中国製だった.持ってきた電源機器が上手く機能して一安心した.とりあえず充電できるものはすべて充電しておく.Wi-Fi も試すがこれはつながらず.


【8月25日】

 起きると霧だった.鶏の声で起きた.出歩いても危険はないと聞いていたので,ホテルから出ようとすると出入り口の鉄格子に厳重に鍵がかけられていた.そういった程度の「出歩いても危険はない」なのだなと思った.
 6時半,板垣氏と近所を歩いてみると,テントウの蛹や成虫,クモなどがいた.サクラらしきものが咲いており.ビワが植わっていた.写真を見なおすと,マクロものは夜露に濡れている.


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 町そこらじゅうにゴミが散乱している.虫を撮るときも背景にゴミが来ないよう苦労した.歩いていると高橋氏とも遭遇.
 道路には出勤,通学中という感じの人がぽつぽつ歩いている.外人だと見て寄ってくる人はいない.
 このときは,とりあえず虫用に3D装備のGH2と,風景用にW1を持って出た.以降,この二つをよく使った.ふだん腰につけているスマホの代わりに,この旅行中はW1をつけて行動することが多かった.
 ほかに半基線長のDMC-3D1と,不安のあるGH2予備機としてGH1も持っていったが,少ししか使っていない.
 カメラのリュックはふだん国内で持ち歩いている状態とほとんど変らない.オリンパスOMシリーズの望遠レンズは重たいだけだと思い,持ってこなかった.
 スマホは海外ローミング契約なしで,とりあえず持っていった.要所要所 Free Wi-Fi を試してみた.結果として,モノがあれば使える場合がたまにあるようだ.
 3DSも一台,立体写真用の個体を持っていった.すれ違い海外のMiiとの遭遇を期待しての事だが,その点での成果は皆無.昨日のバンコックでのすれ違い0は意外だった.普及状況がなんとなく分かった.のちに少しだけ撮影に使用.

 散歩中,バイキング形式の朝食だと争奪戦でC国人宿泊客に勝ち目がないぞと話し,悪い想像をしていたのだが,そういう事態にはならなかった.朝食7時.霧が晴れてきて部屋から遠くまで見渡せるようになってきた.ここは郊外の高級住宅地であり,アンタナの一般的な市街ではないのだが,この時点ではそのことを認識していない.

 バスに乗って午後の飛行機までの時間の使い方を相談していると,バオバブの話になり,とりあえずまず近場のバオバブを見に行くことになった.建築中の高層ビルの横を通り,マダガスカルの人は地震を知らない事などを聞く.ショッピングセンターに植えられた小さなバオバブで記念撮影,している日本人を撮影.筆者はバオバブにはぜんぜん興味がない.

 10時頃,標本商(Remi氏)を訪問.三角紙の山をみんなで物色する.予め書いておいた「甲虫,ゾウムシに興味があるSAWADAです」的な絵入りの紙を渡すと,甲虫の標本が出てきた.ハナムグリやタマムシ,サイカブトなどがあるが,ゾウムシはほとんどなかった.あとデータが皆無.少しだけ選んで押さえておいた.値段を計算しておいてもらう,この日はこれで退散.

 ガイドのセルジュ氏の日本語は非常に分かりやすく,またこちらの言うこともよく理解してくれ,気も利かしてくれるので,大変ありがたかった.動植物に詳しく,日本からのネイチャー系の取材に対応した経験も多いらしい.
 ただ,今回の我々のツアーの目的が「チョウの採集」だと認識したのはつい先日だという.もう少し前から情報交換していたら,有効な提案をしてくれていたと思われ,あとから思うとその点が残念である.
 こちらでは蝶々を「ルゥルゥ」,小さな虫を「ビビケリィ」ということを教えてもらった.

 アメリカの大使館付近では撮影禁止であり,日本の大使館も右に倣えだという.

 セルジュ氏が以前住んでいたという町で採集できるか行ってみた.10時半ころ着.畑があって,それなりに良い環境だった.しかしさすがに市街地なので大勢で網をふりまくるのはまずく短時間で撤収.それでも数種のチョウを撮影できた.
 この辺りはそこらじゅうで車の整備をしており,子供たちもボールベアリングを木枠に装着してカートみたいなものを作り,坂道を下る遊びをしていた.名前を知りたくて尋ねたら「クイッシュ・ミスプリ」,「カレッサ」のような答えを得たが,みんな笑っていたのでたぶん変な言葉を教えられたらしい.でも一応メモ.
 11時撤収.高橋氏が帰ってこないので,日本人が「高橋さ〜ん」と叫ぶと,子供たちも真似した.中に一人,完全に真似る子がいて驚いた.日本人の耳で聞いて全く違和感がない.一回だけ,しかも突然聞いた音を完全にコピーしているではないか.

 高台の高級レストランで昼食.昼からビールを飲む.標準的なビールは"THB"であるという.日本のものに比べるとややこってりしていた.日本人の親子連れの客も来ていて会話する.子供が持っているキツネザルのぬいぐるみにほれ込んで,アレを買わねば,と決心するメンバーもいた.

 場所を変えてランタナの咲く空き地でも採集.紫の輝きがあざやかなタテハモドキがいた.皆で採集するので撮影できず.採り尽くした感あり.「ルゥルゥ」や「ビビケリィ」を使うと子供がそこにいるぞ的に教えてくれた.2時頃に撤収して空港へ.


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 空港には旅人の木が植わっていた.駐車場で大きなトックリバチを目撃,黒くて全くツヤがない.缶のTHBを購入.THBが"Three Horses Beer"だと認識.
 マジュンガ行きの飛行機はターボプロップの双発機(ATR 42-72),プロペラの真横の席だった.プロペラの形が面白かった.マジュンガ"Majunga"はマハジャンガ"Mahajanga"とも言い,綴りもちがう.窓からは河口付近に広がるマングローブが見えた.

 マジュンガからは一回り小さな青いバスを使用(青マイクロバス).セルジュ氏は「C国製だが我々が帰るまでは持つだろう」みたいなギャグで笑いをとっていた.定番のやつだな,と思った.
 運転手によると昨年購入だそうだ,内装の壊れ具合からみて新車ではないようだ.あとで細かく見るとフトントガラスやワイパーにC国の検査証みたいなのが重ねて貼ったままになっていた.本国で使い込んだ後,売られてきたようだ.
 セルジュ氏はマダガスカルの基礎知識みたいな事を少しずつ教えてくれた.カトリックとプロテスタントが仲良く共存している件,良い肉の順序は鳥,豚,牛である件,牛はコブウウシであり,肉を「ゼブ」と呼ぶ件,標準的なビールは"THB"で,他にもいくつかあるがメーカーは同じである件 ….

 海岸のランドマークのバオバブを横目に海の見える宿舎へ,行ったつもりが目的地をまちがっていて,市街地にもどり,別の宿に到着.
 ヨーロッパ系のいかにもリゾートな宿.水色のプールがあり,壁にはヤモリのぬいぐるみ,門の付近にはカイコのオブジェが掲げてあった.部屋の電源も問題なし,すべて充電.パスワードの紙片が置いてあり,Wi-Fi が使えた.メールを発信.ナゴドで三連勝.


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 部屋の明かりが間接照明で暗く,標本整理には不適.ランプシェードを取り外して対処した.

 たぶん日本人向けだということでわざわざ,ラーメンを奮発してくれたようだった.しかし我々には麺もスープもインスタントの醤油ラーメンであることが丸分かりだった.麺の独特の香りから,たぶんマルちゃんだろうと思う.ありがたく完食.

 食べ物(おそらくご馳走)に,やたらとエビが大量に入る.沿岸部ではエビの養殖が盛んであることを後で知った.

 ホテル敷地内の外灯を見ると,植木の葉に薄白いセセリがとまっているのを発見,撮影しても動かず.板垣氏に提供した.


【8月26日】

 起きると6時半,食事まで時間があったので,海岸のバオバブまで歩いてみた.板垣氏は木の下で記念撮影.
 この町には人力車が多い.ちゃんと組合か規格があるらしく空色と赤の統一したデザインで,番号つきである.あとオート三輪のトゥクトゥクみたいなタクシーも走っている.こちらは黄色である(のりものの頁).

 海岸に生えている木はハルニレのように見えたが,近づいてみると葉がぜんぜん違っていた.海岸の砂溜りにはピンクの花をつけた植物にまじってグンバイヒルガオも生えていた.インド洋(といってもモザンビーク海峡側)の海水にはじめて触る.

 写真を撮りながら歩いていると「入って撮って良いよ」的な感じで声をかけてくれた人があり,庭のブーゲンビリアを撮らしてもらった.その後の反応をみていると,朝飯を食わそうという商売だったのかもしれない.

 朝食7時.ここの朝食では"Black tea"のテイーバックが出た.飲んだらふつうの紅茶のようだった.食後,青いバスに給油してアンカラファントシカ方面にむかう.8時すぎ発.
 ガソリンスタンドの店舗で瓶ビールを4種類買った(THB Pilsener, THB Fresh, Queen's, SKOL).一本約2500アリアリ(詳細後述).
 道は国道4号線のようだ.広大な乾いた地形を見ながら走る.草原は枯れていて,ところどろころ焼かれている.
 片側一車線で中央線は引いてない.舗装は良いが,ときどき緩衝箇所がつくってありスピードを緩める必要があるようだ.運転者のマナーはよく,追い越しの際のウインカーはもちろん,追い越されOKの意思表示にもウインカーを出している.マダガスカルは自動車が右側通行である.

 途中,10時すぎ,峠状の集落で停めて周囲で採集してみる.溝というか涸れた川があり,少しだけ緑があり,花があれば蝶が来ているようだ.
 トゲのある植物が多いのでスイープはできないことを学習した.ビーティングすると少しだけ虫が落ちる.柑橘の葉にアゲハの幼虫を発見.緑色で,つつくと黄色めのツノを出した.日本のやつと同じような匂い.
 気になるジラーフ・ビートルについてはきちんと調べていないのだが,食樹(ノボタン科)を画像的に憶えてきていた.それらしきものがあったのでセルジュ氏に見せると,感じは似ているが違うらしい.もっと大きいのだという.なるほどそうだろうと思う.

 更に進んで11時すぎ,別の集落でも停まった.ここも緩い峠で,休憩する車あいてに商売が盛んなようだ.コロッケ状の食べ物や木炭の俵も売っている.宿もあるようだ.
 花が咲いていて蝶がたくさん来ていた.アフリカオナシアゲハを採っているらしい.姿をチラッと見たが寄り付けず.
 やはり涸れた川があり,井戸の周りに湿った土と少しの畑があった.アカザ科の植物で初ゾウ採集.チビゾウだが.
 涸れた川は格好の脱糞ポイントになっていて,ウンコだらけである.それでも流れのあったはずの場所にイトトンボがいる.ここの柑橘でもアゲハの幼虫をみつけた.さっきのより若い糞状の幼虫である.路傍で昼食.
 出発しようとすると採集許可のことでK官ともめている.車中で待機していると木にトンボが止まっている.暇なので席に座ったまま望遠系ズームレンズやロレオの3Dレンズで撮ってみた.1時すぎ出発.

 やがて景観は変り水田が広がるようになった.コブウシを使った水田の耕作が盛んなのだという.大きな湖を横切った.

 いよいよ森林地帯に入った.森林は国立公園にしか残ってないのだ.というか残った森を公園にしたのだろう.公園内にも国道に沿って点々と村落がある.店の並んだ集落を過ぎたところに公園のセンターがあった.ここに宿泊施設もある.

 村と公園施設の関係は,連続しているような,区別しているような,微妙な感じがある.村には柑橘の果樹園があったり牛がいたり,沿道に店が並んだりしているが,公園との間にはフェンスがあり,なんだか行き来が規制されているようだ.店に並んでいるのは付近で採った果実の漬物である.空いたペットボトルに詰めて売っている.公園側には飲食施設があって缶や瓶の飲み物を売っている.村側よりは高価な感じだ.
 あとで見ると"Village de Citrons Anpijoroa"との看板が出ているので,アンピジョロアという村なのかもしれない.

 センターの駐車場付近には高い木が生えている.鬱蒼としているわけではなく,空が見えている.
 森に差し込む陽光の筋を横切って,何か霧のようなものが降っていた.花粉か何かかと思ったら,樹上でサルが果実の食べ残しを吹き散らしているのであった.よく見ると二匹いた.キツネザルが何種もいて地上を跳ねたりするのが見どころのようだが,筆者は全く興味がない.キツツキっぽいが後頭部が尖った派手な鳥もいた.

 公園宿舎での部屋割りが告げられたが,二人部屋は準備中なので待ってくれとの事.付近を歩いてみることにした.国道に沿って先へいってみた.左側に小道が入っているのでそちらへ.やはり柑橘が植わっている.蟻塚がたくさんあって,とりあえず撮影した.
 湖の周りに農地が広がっていることを認識.また国道に出て進み,暗くなるのに合わせて帰ってきた.さすがに幹線道路で,車が飛ばしている.また,放牧に行っていた牛を連れて帰っていく感じの人たちも何組かいた.子供でも上手く牛を操っている.

 ツアー期間中,地図らしきものを全く貰っていない.自分で持ってきた人もいない.すべてガイド任せみたいなものだ.毎日,採集を行った場所の地名は,その晩か次の朝に教えてもらうような状態である.

 そもそも南北が変だし,心の中の方向軸がややこしい.マジュンガを起点とし,アンタナへ続く国道の方向を前方(12時方向)と考えるようになった.公園では国道沿いに看板があり,バスを待つ人などもこれをランドマークにしている.これを中心とすると,マジュンガが6時方向ということになる.9時方向はすぐ湖である.先に徘徊したのは11時方向という感じだ.

 帰ってくるとセルジュ氏が明日の行き先に困っていた.チョウの採集が行える行き先の見当がついてないらしい.明日一日は公園内を歩いてみたらどうかと提案した.植樹や環境のことを学んだ上で外に出ればポイント探しにも有効だと筆者は考えた.
 夕食は7時集合だったので行ってみると,何人かがすでにビール中.飲む人は6時半集合にしたという話,以後ここでのルールになった.

 明日の行き先を検討したが,前述の案は即却下.みんなとにかく採集できる場所へ行きたいという.その方向でなんとかすることに決定した.あと,レストランの灯火にチョウが来ていて,それで盛り上がっていた.
 前菜はバナナに酒をかけてフランベするという,派手のものだったので撮影してみた.この日のビールは4000アリアリだった.
 別の卓には何か宗教の団体も来ており,歌っていた.なかなかのハーモニーだった.


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 公園のセンターには飼育施設もあり,カメなどが飼われており,関連の職員もいる.また講義棟というのか,教室っぽい建物があり,PCのモニタを見せて授業が行われていた.これらは3〜1時方向.
 単独部屋は湖側(9時方向)にあるようだが,相部屋は講義建屋に近いところにある,教官室みたいな感じだった.平屋で窓の施錠が厳重なようで甘い.入り口とトイレ,シャワーが共通で,部屋は独立している.蚊帳が吊ってあり,机は広い.
 電気も問題なし,ふだん以上に使っているW1も電池を入れ替えて両方充電.持って行った蚊取り線香を使用したところ,朝までに白いトレイ上のごくせまい面積だけでも数匹おちていた.

 早く寝たので,夜中に起きた.標本の整理,といってもあまり採れていない.ビールの買い置きのうち,まず金色ラベルの"SKOL"を飲んでみた,普通だった.後でラベルよく見ると,コレだけ製造会社が違うやつ.ラベルを水に漬けるとすぐに剥がれた.で,寝なおし.夜中もときどき国道を通る車の音が聞こえた.さすが幹線道路だ.


【8月27日】

 6時半にはもう明るい.村側へ行ってみた5時方向にフェンスの切れ目があって,村のほうに抜けていた,若い葉を出している木があったので見てみるとハナゾウかホソクチゾウらしきものがいた.撮影したが採集はできない.木を憶えてそのうち採れるだろうと思った.が,結局採れなかった.
 イトトンボが何種かいて,まだ気温が低いので撮影しやすかった.イトトンボ大がイトトンボ小を捕食,とかも撮れた.

 7時朝食.ジュースのマドラーが蝶.触角が折れているものが多かった.8時に出発.一同を乗せたバスは国道を12時方向に進む,やがて森が切れて園外へ.やはり良い森はない.


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 一つ目の集落を過ぎた辺りで左(11時方向)に入る農道があった.バスで入ろうとするが断念.歩いて行ってみることになった.
 セルジュ氏に危険な植物(マメ科)を教えられた.鞘の表面の微毛がイラクサみたいな感じの害をもたらすようだ.
 時間を決め手各自探索.筆者はとりあえず道なりに農道を進む,というか上る.風が強い.
 この農道は開削中らしく,途中にバラストが山積みされていた.雨季にはニュルニュルになるのだろう.農道は木の茂る丘を左に巻いて進み,すぐに終わっていた.木のある側をビーティングするとアリモドキなどの甲虫も少しおちる.が,乾燥していて芳しくない.
 右側のゆるい斜面は荒地のようだが,サトウキビの刈跡が続いている.たぶんサトウキビ畑だと思う.見渡しが良いので長基線式を撮った.あとで編集すると出来はまあまあ.

 黄土色のサトウキビ畑の起伏のなかで,弱い谷になった部分にはすこし緑がある.おりてみることにした.
 途中,異様なものがあった.地中に埋まった直径数メートルの岩塊を丸く掘り出そうとしている途中のような感じだ.何やら札が付いている.レアアースを含んだノジュールだろう.既に掘り出した跡らしいものもある.掘り出して谷沿いに転がしていくのだろう.テコの原理,みたいな状況を想像.

 谷に沿って歩き,ビーティングしていくと,大きなグンバイみたいなのを見つけた.奇妙な形だ.一気に三匹落ちたので,アレコレ撮影していると,逃げられて結局一匹しか採集できなかった.また居るだろうと思ったのだが,チャンスはこの一叩きだけだった.

 匍匐性の木本の葉縁に食痕があったので叩いてみるとゾウムシが採れた.ヒョウタン形の飛ばないやつのようだ.繰り返し叩いて10匹ほどゲット.

 カンタンみたいなのの成虫も居た.谷沿いに下りていくと放牧地になっていた.遠くで数頭の牛を少年が操っている.大声で叫んで手を振り,ルゥルゥと言ったら,それなりに納得してくれたようだ.
 そのまま放牧地を抜けて国道に出た.国道脇をビーティングしながら戻っていると,たぶん買出しに行く家族連れと出会った.ボンジュールとルゥルゥとビビケリィ以外は言葉が通じない.でもなんとなく分かってくれてるようだ.
 おばちゃんがこの植物に気をつけなさいと,例の豆を教えてくれ,嬉しかった.「マゲデ・ヘーディ」と呼ぶようだ.メモしていると子供たちがのぞきこんでくる.漢字を書いて,自分はジャポネでサワダというのだというと,ボクは何々でこの子は何々だと次々に言われて困った.二音節くらいの短い名前ばかりだった.そのときに「タキルチャ」というのもメモしたのだが,何のことだったか思い出せない.
 あとでセルジュ氏に聞くと,問題の豆は Muchona 属の種で,観光業界では「バッファロー・ビーンズ」とよぶのが一般的だという.

 車に戻ると遅刻だという.11時集合だと思っていた.本当に一時間間違ったのかもしれないが,早々に諦めた皆が途中で撤収時刻を変更した感じもあった.それは聞いてないし.

 メンバーがかなり分散して好適環境を探索した結果,先の一つ目の集落を右に入った辺りが良いのではないかとの説が浮上した.公園基点でいうと1時方向の場所である.バスは少し戻ってそこへ向かう.一つ目の集落は,朝に通過した時の様子とは変わって,いっぱしのマーケットの活況を呈していた.大賑わいである.さっきの家族連れが買出しに出向く理由が納得できる.

 国道から折れて市の中を進む.この道は幾つかの集落に通じる生活道路のようだ.やがて店もとぎれたあたりにやや木々がかたまった場所があった,小さな流れもあり,花が咲いている.11時頃到着.バスを降りてすぐ,高橋氏がアンテノールの第一号をネットイン.一同の期待が大いに高まった.しばらくこの付近で採集することになった.

 ビーティングして回ると,ある枝でゾウムシが落ちた.一瞬,シギゾウに見えたが,よく見るとちがう.繰り返し叩くと数匹とれたが何にいるのか分からない.摂食中というより枯れ枝から羽化脱出直後のような気もした.似た木を叩いても採れず.結局謎のままである.
 枯れた草原でスイープしてみたがダメ.やはりビーティングと撮影.
 この地方の集落には,その下で休めるような木陰の広い木が残されていることが多いようだ.実際,人が寝転んでいる光景もよく目にした.この採集場所にもそのような木があり,われわれも食事をした.家屋は見当たらないが,ちょっとした広場がいくつかあり,最近まで家があったのかもしれない.道路の分岐点でもあるようだ.
 このサイトには水田もあった.細い水路には水が流れていて,田んぼは潅水してあり,イネの花が咲いていた.カエルもいた.
 アカトンボ的な感じで粉っぽい深い紫のやつがいた.翅にも色がついている.二回ほど見かけたが撮影できず.
 牛の放牧地もあるが,柵などはなく,子供が見張っている.牛が場所をそれると走って行って叱りながら連れ戻すのだ.

 水路の縁には溝を掃除した際のドロの堆積があり,そこで日向ぼっこするチョウが多かった.中でもタテハモドキはよく目立つ.ぜひ撮影したい種類である.かなりねばったが,なかなか近寄らせてくれない.縄張りを張っているようで,神経ピリピリなのだ.遠目のカメラで数コマ抑えただけであった.
 木の上を優雅に飛ぶアンテノールもちょっと見たが,何人もの蝶屋が必死で追い回しているので,もし降りてきても撮影は無理だ.筆者ごと採集される勢いである.

 予定していた1時になり一同集合した.ちょっと先に行って見ようということになり,バスで移動したがダメで,すぐに引き返して同じ場所で粘ることになった.ここで昼食.
 ここではカメレオンがいたのを誰かが持ってきて,木に止まらせ,皆で撮影した.褐色のやつで思っていたより大きかった(カメレオンの頁).

 アンテノールは結局ここでは2匹どまりだったようだ.

 さらに別の場所を,公園を逆に抜けた地域でさがしてみることになった.2時ごろ撤収.

 公園基準で6時方向にバスで移動,3時頃,ちょっとした水田と森がある集落を発見し,村人に交渉,採集させてもらうことになった.環境は悪くなかったが,採集はいまいち.水田付近でチビゾウが採れただけ.
 ここでも帰りがけにアンテノールが目撃され,数人がネットを振ったが,逃げられた.農家のおばちゃん二名の呆れ顔が印象的だった.
 アンテノールは赤色に反応するという,だから皆んな赤網なのだ.おばちゃんの一人は赤シャツだった.
 少年も一人居たが,警戒気味なので言葉を交わせなかった.庭には立派な雄鶏がいてさかんに威嚇していた.失礼なことをしたような気がする.4時ごろ撤収.

 帰りのバスから空をみると雲量50くらい雲が出ていた.降ってくれないかなと期待しつつ中途半端な成果とともに帰還.

 どうも活動時間がおかしい.チョウ屋さんのペースなのだろう.撤収が早すぎる.なので帰ってきたら,シャワーより近場の散策を優先することにした.
 この日は手前側の湖畔を散策してみた.派手なサシガメの交尾を撮影.アシナガバチの巣も発見,巣の向きが変だ.縦なのである.こういうのがあると聞いたことはあった.蜂じたいは小型だが精悍だ.神坂先生がやられたというのはこういうやつかも.
 子供たちが魚を見せてくれた.バケツには魚が三匹入っていて,一匹はタイワントジョウかライギョみたいなやつ,もう一匹はブルーギルのようだった.前者を「カラピー」,後者を「トウンル」と呼んでいた.魚一般は「フィバタ」と聞こえた.湖面を埋めているホテイアオイは「チカフナン」である.
 国道沿いに6時方向に水門のところまで歩いた.橋から長基線撮影,これも出来はいまいち.

 部屋に帰ろうとすると,飼育施設のところで職員さん数名が木の上を見上げて何やら話している.横で見ていると,あれと指差してくれた.
 例のアンテノールの蛹である.アンタナの標本商でみせてもらったのと同じで,日本のジャコウアゲハ(お岩さん)と似た形で色彩が違うやつであった.
 高い位置についているが,枝を引っ張ると届く.さっそく撮影したが既に暗くてピントを合わせられない.

 いつもどおりに夕食,毎回セルジュ氏がメニューを訳して説明してくれる.筆者はどうでも良いのだが,ひとつの業態としてエコツーリズムが確立しているのだなぁとも思った.蝶採りにくる団体は多くないが,世界中からマダガスカルの自然を見に来る人がたくさんいて,日本人も次々とやってくるのだ.

 レストラン側が,明日の夕食時には何やら民族舞踊みたいなことを見せると言っているらしい,もちろん有料なのだろう.今後のこともあるので,あまりケチりたくはない.しかたなく一同了承.この日からビールが5000アリアリになった.
 作戦会議,明日も同じポイント(二番目の)に行くことに決定.飼育施設の蛹の件を話しておいた.あれが消えたら犯人はこの8人の日本人の誰かだということになる.土下座か? 日本人はハラキリか? この日も例の賛美歌だかゴスペルだかの声が聞こえていた.明かりに蝶は来なかった.

 相部屋の二人は明日部屋を移ることになるので,荷物をまとめておくよう言われた.せっかくのマイ・デスク状態なのに撤収せねばならない.それより心積もりしていた洗濯乾燥が不可能になるのが痛かった.

 この夜は備蓄ビールのうち"Queen's"を飲んだと思う,ちょっと薄めであったような記憶があるだけ.同時に残りの2本,"THB Pilsener"と"THB Fresh"も一気にラベルをはずしてしまい,区別のため後者の王冠にマジックで"F"と記入,こういう記憶のほうがハッキリしているのだ.

 やはり早く寝て,夜中に起きて標本を処理して,また寝た.


【8月28日】

 晴れている.6時半には外は撮影できる明るさになっている.レストランで椅子を借りて蛹を撮影.健全なやつのほかに,寄生蜂にやられたようなのも一個ある.この朝は11時方向の湖畔を歩いてみた.寝起きのイトイトンボなどを撮影.移動用に荷物をまとめる.

 朝食後,一同バスで昨日のポイントへ.8時出発.
 例のゾウムシを狙うがもういなかった.代りに丸い果実をめくると虫が居ることに気づいた.イチジクに似た弱い香りがある実である.あとでセルジュ氏に聞いたが名前は不明.ともかく,落ちているこの実をめくると,裏にゾウムシが二種類付いている.一つは前に採った瓢箪形のやつだと思う.もう一種はシュロゾウやイネゾウモドキに似た感じの種類である.何個かめくるうちにヒナカマキリもいた.
 乾いた地面を走るゴミダマも発見.日本のスナゴミダマとはかなり違う.匂いもない.もう少し大きければかっこいい虫なのに.
 派手な色彩のセセリの幼虫も発見,小さな幼虫が葉を綴った状態は何度か見ているが,今度のはかなり大きい.

 この日もドロの壁でチョウを待った.シジミは撮れるがタテハモドキは厳しい.少し離れた場所に陣取っている別の個体を狙って何とか撮れた.ややくたびれた個体である.

 午後から,希望者だけ昨日の第一のポイントに行くことになった.そこではツマアカシロチョウの類が採れたという情報で,まだ採ってない人が,もう一度行きたいということらしい.
 いっぽうで高橋氏の体調が優れないようで,バスは第一ポイントに人を下ろしたあと,彼を宿舎に届ける.筆者も昨日のグンバイが心残りなので,ツマアカ・ポイント行くことにした.
 結果的にグンバイは見つからず.ツマアカも見かけたがマトモには撮れず,かわりにナントカシジミの仲間(不詳)が撮れた.ただし大破個体.

 路側で待って,4時にバスに収容される.

 帰って例の蛹を見に行った.高橋氏から幼虫もいたとの話を聞いていたので探してみたら,かなり高いところに二匹居た.いちおう撮影.望遠系ズームレンズとロレオの3Dレンズを使用.これらは結局二回しか使わなかったと思う.

 変更になった部屋は,湖側つまり9時方向になっていた.行ってみるとベランダに野鳥観察者がまだ居て観測中だった.ノートをつけているようだ.明日の朝も早出して来るのかもと思った.試しにTシャツとパンツを一枚ずつ洗ってみた.

 ビール時間には行かず,備蓄の瓶ビールの"THB Fresh"を飲む.が,ビールっぽくない.少しアルコールが入ったレモネードみたいなものだった.まぁそれはそれで不味くはなかった.
 ふつうに夕食.例の民族舞踊はなかった,特に見たいわけではないのでむしろ歓迎.
 高橋氏の体調は回復せず,飲食物を受け付けないという.本人は飛行機の便を早めて日本に帰ることも考えているという.ただ,専門が外科とはいえ海外旅行での疾患にくわしい神坂先生の見立てでは,原因はともかく一番問題なのは脱水症状であって,注射一本で改善する見込みが強いという.現地受け入れ旅行者(日本人社長)に連絡して相談し,一緒にアンタナまで帰ってマダガスカル国内での受診,入院を手配したようだ.

 こんどの部屋は,湖に近いためか,灯火に少し虫が来ていた.たいしたものはいないし,もちろん採集できない.やはり早く寝て,夜中に起きて標本を処理して,また寝た.


【8月29日】

 未明に起きたら灯火に立派なバッタがきていた.室内で撮ったが上手くいかない.コップをかぶせて拘束.板垣氏も早く起きて虫の整理をしていた.
 トイレは共用なので脱糞の時間差をうまく調整する.なお,そこのゴミ箱が明らかに”河童”であった.なぜか日本の河童なのだ.撮影.


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 6時半.周りを歩いてみた.園内の歩道は係の人が毎朝箒で掃いているようだ.大量の落ち葉を路側に寄せている.落ち葉の堆積は底までカラカラで,下の土も乾いている.掃除しすぎだが,これは公共事業なのかもしれない.
 例の丸い実がここにも落ちていて,めくるとやはりゾウムシが見つかった.落ち葉掃除のおっちゃんに聞いて「チットバー」「チティンディ」みたいな答えを得たが,この果実の名前かどうかはっきりしない.
 湖畔には観鳥台というか楼があった.階段が一個抜けているが上ってみた.
 部屋に帰ってバッタを撮影.もうあと一コマというところで飛び立った.

 朝食時に,今日は園内に残ることを伝える.4時に公園のランドマークの所で拾ってもらうことにした.

 洗濯物は一晩で乾いていた.荷物はバスに積んである.昼用の食物は腐りやすそうなものだけを持って行くことにして,ほかは車に積んだ.残りのビール一本と水の瓶は宿の床下に隠しておくことにした.コレを持って歩くわけにはいかない.

 バスの発車を待たず,ではでは午後に,と歩き出した.国道沿いに12時方向に進むとすぐカメレオンを見つけた.こんどは緑のやつだ.まだバスが見える距離なので,皆に知らせようかとも思ったが,ややこしいので自分だけ撮影(カメレオンの頁).
 少し行って左に入る.11時方面,初日に来た柑橘園,蟻塚を抜けるあたりの陽だまりにトンボやチョウが多かった.ウォーミングアップのようだ.その先の林床に小径が続いており,やがて木道の跡みたいになっていた.杭だけが並んでいる.雨季には修復するのだろう.
 湖の奥側(上流側)は水田と牧草地になっていて見渡しが良い.いかにもハイキングコースである.ロープにつながれた牛が数頭いた.湖の畔では数人が作業している.こっちを見ているようなので手を振ったら返してくれた.公園滞在の外国人扱いには慣れているのだろう.
 やがて小川を吊橋で渡ると湖の対岸である.林床と林縁と湖岸が適度にまじっていて良い.暗いところでホソチョウをよく見かけた.これまでは飛び方が早くて撮影できなかったが,ここではチャンスが多かった.

 観察路というかハイキングコースというかの小径は湖岸からつかずはなれず続いている.それから分岐して山の奥に向かう道も何本かあった.釣竿(といっても太い棒)を持った人たちとすれ違う.村で会う人より体格が良い.魚とりや実とりの主力は昼間は森に入っているのかなと思う.
 分岐点のところにウマノスズクサ科らしい植物を見つけた.探してみると,ちょうど目の高さのところにアゲハの幼虫が居た.様子がおかしいのでよく見るとまさに脱皮中である.たぶんアンテノールだろう.ほかをさがしたが一匹だけだった.しばらくアレコレと撮影.
 抜けたあとなかなか動かないので,あとで見に帰ってくることにした.先に進む.

 湖の中央は広く水面が見え,波立っているものの,縁はホテイアオイに埋め尽くされていた.砂の溜まった場所ではチョウが吸水に来ている.トンボも縄張りをつくって空中戦をしている.やや大型のイトトンボで胴が水色で胸が山吹色のやつがいて美しかった.写真を撮りたかったがけっきょく遠目のやつだけ.
 この砂溜りの付近ではアンテノールも見たが,一瞬だけだった.

 「クロコディルが噛みつくので注意」の立て札もあったし,子供たちも言っていたのでややびびった.噛み付いて回転するらしい.肉を食いちぎられるのだ.どのくらいのやつがどんなところに潜んでいるのか,私は何も知らない.

 ばくぜんと湖を一周することを目指していたが,いろいろと観察,撮影しているうちに,微妙になってきた.脱皮幼虫に一旦戻ると一周は困難かも.そもそも道が下流側をどう通っているか知らない.最悪の場合,袋小路かもしれない.なので,来た道を戻ることにした.持ってきたバナナとゆで卵を歩きながら食べる.昼ごはんはこれで十分だと思う.

 湖のこっち側(9時方向の湖の対岸)にも観鳥楼がある.こっちは階段が2つ抜けている.上って対岸(つまりセンターのあるほう)を見てみたが特にどうということはなかった.
 明るいところに花が咲いていると,チョウがよく来ていた.動きが激しく撮影はむつかしい.花があればチョウはいるのだと思いつつ眺めた.これまでのポイントでは見たらすぐ採る人が何人もいて,採り尽くしていただけなのだろうと思う.

 コモンタイマイの仲間の産卵シーンも見た.はずなのだが,その葉を見ても卵がみつからない.かわりに小さな幼虫がいた.たしかにアゲハの幼虫である.ぜんぜん同定できないが,まぁ良いか.

 時間もなくなってきたので引き返す.幼虫の脱皮は完了していた.脱皮殻を自分で食べたようだが,ほとんど動いていない.とりあえずその状態を撮影して戻る.


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 センターに着いて,さぁビール.その前に果樹園の村の漬物が気になった.村には同じような店が並び,ペットボトルに詰めた漬物を売っているのだ.どう考えてもそんなに売れるわけはないと思うのだが…
 値段が書かれていないので,聞いてみる.言葉が通じないので筆談だ.おじいさんは文字が書けないようで娘が書いてくれたのは"1000Ar".ところがこちらに 1,000Ar のお札がない.10,000Ar からだとおつりもないようだ.センターの売店に行ってTHBの缶を買って小銭をつくり.無事に漬物をゲットできた.
 なおマダガスカルのお金はすべて紙幣である.小額の硬貨は存在する(空港の土産品店で目撃)のだが,現実の取引はすべて紙幣で行われている.

 隠しておいた瓶ビールと水がある.マンゴーの漬けものを肴にまず缶ビールでプハーした.マンゴーは細く切られており,程よい塩味で,香りがよく残っている.吉野家の紅しょうがの酸味の弱くした感じだ.
 部屋で静養していた高橋氏もやってきてバスを待った.体調はあい変らずのようだ.常温の方の瓶ビールをちょっと試してみられたが,良くないようだ.それでも「あっ」とか指差される先を見上げると,たしかにアンテノールが飛んでいる.おそるべし.筆者は今日一日,気づいてないだけで何回も見逃してきたのだろうと自覚した.

 高橋氏によると,園内清掃の人が空のペットボトルを回収しているらしい.残っている水をまとめ,空になった分を手渡しにいったら喜んでいた.これが漬物の容器になるのだろう.

 バスが到着.採集組の成果はいまいちだったようだ.アンテノールに関しては結局一匹も採れなかった方もあるようだ.移動するのでこの先採れる可能性はほぼゼロである.あまり詳しく聞くのは気の毒な気がしたので,こちらは湖の向こう側に行って,それなりに満足した的に報告.

 バスは来たルートで4号線をマジュンガに戻る.荒涼とした風景の意味が来たときよりも理解できた.乾期のマダガスカルの平原は本来,荒涼としているものなのだろう.しかし人の手の入ったこの荒涼とはたぶん違うものなのだ.

 マジュンガの宿は前と同じである.早く着いたので,付近を散策した.前回とは逆の方向に行ってみると,遊園地や教会やサッカー場があった.遊園地ではスヌーピー的,ミッキー的,スーパーマン的な造形を確認した.

 サッカー場には照明塔が立ち,立派なスタンドがあった.あるはずの所に看板がなかった.盗まれたのか? メインピッチは試合終了直後のようだった.
 たむろしている子供たちは裸足だ.場内の広場で試合をしている子供たちは靴を履いている.しかしユニフォームを揃えていないので,見ていると分けがわからない.
 「野球は道具が要るが,サッカーはボール一つで…」みたいな主張をよく耳にするが,サッカーにはユニフォームが,せいぜいゼッケンが必要なのではないか,との反論を思いつく.

 お土産的なものも見つからなかった.目抜き通りに「カバン街」が成立していて驚いた.街にはモバイルの何かを売っているスタンドがある.回線権みたいなものだろうか? もちろんハードを売っている店も少なくなかった.
 本屋も点在していた.教科書や子供向けのものが多いように思う.
 ごく普通に走っているトゥクトゥクみいたいな三輪タクシーの写真を撮りたかったのだが,停まっているのに出会わないまま暗くなってしまった.

 あきらかにダウンタウン側に行ってみたら店が閉まり始めていた.声をかけてくる人が居て,たぶんH系の客引きだと思う.
 ちょっと高めのお土産衣料店みたいなのに入ってみたら,Tシャツがあった.きちんと値札が付いている.日本で買うのと同じくらいの値段だが言い値で購入.

 宿の Wi-Fi,東京ドーム三連敗,松田に黒星とかを知る.

 夕食時に明日の相談をした.飛行機までの時間があるので郊外のポイントに行く事に決定.セルジュ氏がつてを頼りに急いでさがした場所らしい.


【8月30日】

 出発を待ちながら撮り損ねていた三輪タクシーを撮影.走行中の車両に「撮るよ」的なジェスチャーをすると手を振ってくれた.WWFのマークをつけた立派なランドローバーが通過したが撮り損ねた,残念.
 改築中のロッジ最上階やフランス誌のプレステ本を撮影.

 今日の採集地は空港とは別の方向と聞いていたが,実際には空港の前を通ってすぐの所だ.
 池の周りに畑が広がっている.水汲み用の溝が掘ってあり,そこで水を汲んで畑に撒いている.非常に勤勉な感じの農耕風景である.ネギのほかにウリ科など数種の野菜が栽培されていた.
 ネギの花には虫がよく来ている.薬は撒いていないようだ.
 ビビケリを撮っているのだというと,おっちゃんが畑の土のミミズを見せてくれた,せっかくなので一枚撮影.

 この池にはハスに似た挺水性植物が生えていて,紫の花を咲かせていた.ホテイアオイは見かけなかった.
 翅に帯があるトンボを狙って撮影.帯の機能がわかった気がした.やつはドロの上に平たく止まる.ドロの上に胴体と帯の影が出来る.遠目には平行な6本の線分に見え,虫の形には見えないのだ.

 ミズスマシ,ハンミョウ,などを見かけたが,結局採れず.ゾウムシは1匹だけ.アオバアリガタハネカクシらしいものも居る.

 「日本人はあっちだよ」的な感じで声をかけてくれた人もいた.迷子だと思われているのかもしれないし,野菜泥棒だと思われているのかもしれない.
 一旦バスのところにもどって状況を確認した.皆は木の混んだ辺りでアンテノールを狙っているようだ.結局また水辺へ戻って時間まで雑虫をさがすことにした.
 道で会ったら「シガー」みたいな事を言う若者もいた.タバコ持ってないし.ちょっとすさんでる感じもした.
 地上に伏したカメレオンの死骸を発見,赤褐色をしている(カメレオンの頁).まだ柔らかかった.路を横断するヘビも,毒蛇を見分ける知識がないので,とりあえず警戒距離で撮影.

 空港へ着くと時間つぶしに車両の写真などを撮った.普通の車もなかなかシブイ.
 ちょっとした施設建屋の影で皆で弁当を食べた.コブウシの肉が焼き豚みたいな感じで美味しかった.もっと薄く切ってくれたらなぁ,カラシを付けて食べたらなぁ,などと思った.
 ちょうど食べ終えたころ,その場所へつっこんで来た車があった.施設に用事がある業者だろうと解釈し,日本人一同が急いで避けてやったら,単に意地悪だったらしい.セルジュ氏が激しく批難したら,運転手は謝っていた.C国人嫌いの人なのだろうと思う.

 空港での待ち時間,缶ビールを飲もうとすると小銭がない.かき集めて1500Arで飲めるのはメニューにCafeNoirと書いてあるやつだけだ.それを頼むと機械が動いてないので時間がかかるけど良いか的な感じで,奥の部屋でヤカンで沸かして手でいれてくれた.かなり時間がかかった.ノアールでも砂糖の壷を出してくれたので,すこしだけ入れた.

 飛行機を待つ間,一同で記念写真を撮った.3Dなので前後に奥行きのある斜めの構図とし,前後にポーズをとるように指導(?).
 アンタナの空港で両替をしていたら寄りたいと話すと,雫石氏が手もちのアリアリに替えてくれた.10$→20000Ar.

 飛行機は来るときと同じ機種だった.同じ機体かも.が,特殊な席になった.右前端の4席対面みたいな席である.最前列は後ろ向きに白人男女,二列目が前向きに日本人男子二人,我々なのだ.
 問題は足のやり場である.彼らは英語のようなので,早めに単語羅列で会話した.フットかレッグか迷った.問題の存在を共通認識とし,それなりの協定を結ぶことが出来たように思う.
 隣の平尾氏はメモ魔らしく,少しの時間を見つけて記録をつけておられる.視線をメガネの上から通して,上に伸ばした両手で細かい字をビッシリ書いておられる姿が印象的であった.

 アンタナにつくと,やはり涼しかった.現地旅行社の日本人社長と合流,高橋氏は病院に直行することになった.
 他の七人は例の標本商へ向かう.バスは初日と同じ日本製のやつだった(ニッサンのマイクロバス).アンタナの町を走ると,やはり水が豊かな大きな街であることが再認識できた.マダガスカルには交通信号がない.一回も見なかった.大きな交差点はすべてロータリーになっている.

 バスの窓からW1で時間差の長基線式を数枚撮った.そのときはよく分からなかったが,帰って編集してみると,そこそこ良いペアが撮れていた(08/30ハイパーの頁).

 標本商を再訪.預けていた標本の袋に清算書が入っていた.想像していたよりは安かった.内容を取り違えられていた袋があって紛糾しているのを横目に.ユーロをドルに換算,30ドル払い,領収のサインをしてもらった.
 二階にもあるというので上がってみると,虫食いでボロボロになった甲虫の見本があった.悲惨な状態である.
 オトシブミはゼロだが,なかなか良い虫も扱っていた(過去形)ようだ.扱いうる可能性があることを示している.一応写真で押さえておくことにした(本サイトには未掲載).

 藤田氏は標本の買取判断を高橋氏に委ねられた事で困っておられた.一部でも買わない判断をした場合,あとで残念な思いをさせてしまう可能性がある.よほどの理由がないかぎり「買わない判断」はできない.つまり全品を引き取ってくることになる.高橋氏自身は体調のこともあり気楽に依頼されたのだろうが,実際には酷なお願いなのだ.
 けっきょく藤田氏は何とかお金をやりくりし,高橋氏が押さえていた標本を全品引き取られたようだ.

 アンタナの宿は初日と違って都心の一等地だった.列車はほとんど走らないらしいが,街の中心には立派な駅があり,付近の道路がバスターミナルとして機能している.その駅前の角のホテルである.

 筆者はアンタナナリブを「アンタナ」と略してしまっているが,語源的に「アン+タナナリブ」であるらしく,現地で見かける略記は"TANANARIVE"である.マダガスカル航空が日本人向けに作ったパンフレットには「タナ」となっている.
 そう,マダガスカルでは何かにつけて全て大文字で表記される.

 セキュリティーをふくめてホテルの設備は万全だが,外国人観光客は出歩ける環境ではないようで,窓から外を眺めるだけだ.もちろん電気は問題なし.
 このホテルにも Free Wi-Fi があるが,アクセスは制限されている.スマホからグーグルマップは見られたが,ランドサットや航空写真にならなかった.メールも不通.
 フロントに市内と近郊の地図,いわゆるプランが置いてあったので一部もらった.これは何かと重宝した.
 フロント前にはPCが一台供用されている.これでもグーグルアースを見てみるが,地図だけしか出なかった.明日の経路をプランと対照し,目的地がプランの収録圏外であることを理解した.


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 部屋の調度品に虫を発見.ソファがトンボの絵柄だったので撮影,稲作の国なのでトンボ好きなのかなぁと思った.夕食時にトンボの神坂先生に伝えたが,気づいてなかったとの事.

 いつもはセルジュ氏が夕食の説明をしてくれるのだが,この日はアンタナなので自宅に戻っており,代わりに雫石氏が聞いて我々に伝えてくれた.スープが珍しく全員に好評だった.お代わりをする人もいたが筆者はしなかった.
 メインは鳥か魚か,だという.皆が魚を選択したので,筆者は鳥にしてもらった.これが失敗だった.

 鳥は良い感じの笹身なのだがソースがレバー味のやつだった.本日の料理が掲示されている黒板みたいなやつを見にいくと…フランス語が並んでいる中にパテらしき単語,これかっ.
 このレバー味というのがどうも苦手だ.笹身は半分くらいしか食べられず.添えてあるパスタもソースに侵食されていて全部は食べられず,もったいないことをしてしまった.こうなるとスープをお代わりしなかったのも悔やまれる.

 空輸したマンゴーの漬物から汁が漏れているようだった.もともといびつなペットボトルだったので厚いビニール袋に入れていたが,やはり少しずつ漏れている.瓶を開けると激しく発泡した.気圧のせいか,発酵が進んだのかは不明.食べてみると異常ないようなので,板垣氏にもらったビールのつまみにした.


【8月31日】

 この日は長距離のバス移動なので7時前にホテルを出発した.アンタナの市街地を抜けるだけでけっこう時間がかかった.やはり大きな街だと実感.
 郊外にはバイパスっぽい大規模な直線もあったが,すぐに昔からの街道らしい風情になった.今回は国道2号線を東に向かうのだ.次第に山を登る感じになり,川や鉄道とからみながら東へ向かう.平地はほとんど田んぼになっている.
 ここが峠かなという感じのところを通過したが,そこからもだらだらと登りが続いた.7時半頃「ゴリラ岩」が見えた.なるほゴリラの頭に見える.ただこの名称はセルジュ氏が勝手に言っているだけかも,観光業界での定番なのかも.
 それぞれの街の入り口には街の名前が示されている.コンクリートで作った標識か,建物の壁面に大書である.バスの窓から撮影しようと試みるがたいてい失敗した.
 雲が低く,8時前からは小雨が降ってきた.8時頃"Manjakandriana"を通過.

 国道はやがて森林の中を走るようになるが,木は植えたユーカリである.高さの揃ったユーカリの林に他の樹種がまじる程度.稜線沿いにそんな森がしばらく続いた.
 やがて,谷のこっち側は在来種の森だ,とかいう状況になってきた.渓谷が険しいため切り出せない谷でのみ原生林が残っているようだ.

 東に向けて次第に降りていき,9時すぎに Marozevo の爬虫類園に到着した.看板の文字をあとで読むと"Reserve Peyrieras ..."となっている.ホテルのプランにぎりぎり掲載されている施設だ.
 セルジュ氏が園のガイドと交渉するとのことで,その間,ネットを出さずに周囲を散策.標本を見せてくれたので関心のある人は物色して商談している.
 その間に園内の上の方に行ってみた.天気が悪いがチョウも飛んでいた.ワニをかってに拝見.
 庭に植えてある植物が,ジラーフ・ビートルの食樹(ノボタン科)に似ているので,またセルジュ氏に聞く.こんなにモケモケではなく,もっと大きいのだという.


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 しばらくすると園のガイドさんが来て,チョウのポイントへ案内してくれることになった.小雨の中,谷を遡っていく.小さな川の流れや耕作地,果樹園などが混在してなかなか良い場所を通る.チョウのポイントは峠状のところらしく,晴れると吹き上げがある感じらしい.
 この谷では大きなミズスマシが採れた.雫石氏が掬って二匹入ったのを一匹もらったのだ.同じ場所であとで狙うと小型の種しかいない.カミナリハムシもよく見かけた.
 あと,伸び盛りという感じの植物の葉に,ジョウカイモドキかなにか変な甲虫がたくさん居て,いかにも繁殖期っぽかった.しかしそれも一株だけ.
 村人がレンガを焼いている様子を見た.道で行き違う際の挨拶は「サラマァ」というようだ.子供は特に外人向けに(ボンジュールではなく)「ボンスゥ」とも言ってくれる.
 しかし雨は次第に強くなってきたので今日は撤収することになった.入り口まで降りてきたころには殆どやんでいたのだが.そのまま11時半頃出発.

 12時半くらいにモラマンガの街に到達した.この赤い建物が今夜泊まる予定の宿ですよと教えてもらいつつ通過,そのまま採集予定地に向かう.街の中心の十字路を左折したので,グーグルマップで見ていた44号線に入ったのかと思った.後で調べるとあの交差点で曲がるのが2号線の経路のようだ.従ってバスは2号線沿いにトアマシナ方面に東進したことになる.
 ちなみに,帰国後,全ての採集地を航空写真上に比定することができた.ただし対応した適切な地名は得られないことがある.グーグルマップに入力されているこの地域の道路や鉄道の情報は荒く,誤指定が多いため,航空写真と地図が一致しない.一部はズレて指定されることを斟酌して理解しなおすことができる.

 1時頃,峠状の場所で路側に停めて,そこで昼食だという.良さそうな場所である.時間がもったいなかったので,食べずに採集した.ビーティングしていくと,黒いオトシブミ♂が採れた.ほらね.
 しかしどの種の植物から落ちたかよく分からないまま,空振りが続く.バラ科の,ほぼノイバラではないかと思われる植物が怪しかった.けっきょくここでは30分ほどしか居られなかったが,中型のゾウムシを二種追加できた.黒いオトシブミも1♂追加のみ,この二匹目はバラ科ではなかった.
 小さな暗褐色のカメレオンも落ちた.鼻先が尖っている(カメレオンの頁).
 この昼飯サイト,後で教えてもらった地名は"Votobe Tsatsaka"であった.

 バスはアンダシベの保護林の事務所?でガイドのパトリス氏を拾う.セルジュ氏によると彼はこの地域 No.1 のガイドだという.日本語での説明なのでパトリス氏は肯定も否定も謙遜もしない.
 2時すぎにはパトリス氏推薦のチョウ採りサイトについた.ユーカリ主体でわりと開けた森である.晴れれば送電線の鞍部に吹き上げがありそうに思った.虫はそれなりにいろいろいたが,花も少なく,あまりパッとしない場所だった.
 ただ問題のノボタン科が生えていた.背の低い二株だけで,周りに成木は見つからなかった.もちろんジラーフ・ビートルの痕跡は皆無.


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 この時点で,やっと食樹と初対面である.
 今回はこれまでかな,また来る際はきちんと時期を選んでここに来よう,そう思った.
 葉を一枚持って帰って,セルジュ氏とパトリス氏に見せたらコレだと言っていた.彼らは私がチョウではなくジラーフ・ビートルを採りに来たらしいと再認識してくれたようである.居そうな場所があれば教えてくれそう.次回は確実だ.

 バスは国道から北に折れてアンダシベ"Andasibe"へ向かった.アンダシベはちょっとしたエコツーリズムの村らしく,外人向けの宿泊施設などがいくつもあった.
 その道沿いでパトリス氏が「チェックしてくる」といってバスから降りた.何やら木を見上げている.
 これだなと思ったので筆者も降りて見上げると,ジラーフ・ビートル♂が分かりやすい場所に止まっていた.葉の上で突っ立っている.日本のエゴツルクビオトシブミなどと同じだが,なるほどでかい.


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 あそこに居るというと本当だ本当だと騒ぎになり,バスから長竿を持って人が出てきて即,採集.


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 しばらく生かして撮影したいので,ペットボトルに入れた.ほかにもいるか探したいし,周囲の環境も眺めさせてほしかったが,もう4時で全員帰還モードである.けきょく停車時間三分で,観察時間一分程度.1♂と植樹の枝を採集してすぐ撤収となった.

 最大の目的が突然達成され,妙な気分だった.「勉強してまた来るぞ」との腹をくくりかけていたマダガスカルが,「もう一生来ることはないだろう」になった.

 モラマンガへ戻る途中,昼飯サイトで15分だけ採集した.4時半である.チョウは無理かもしれないが,雑虫採集はまだまだ可能な時間である.同じ料金払っているのにえらい扱いである.

 モラマンガの宿舎もセキュリティー万全な感じで,外には出られなかった.ここでも電気は普通に使え,Wi-Fi はないようだ.
 夕食後,室内でジラーフ・ビートルを撮影(キリンオトシブミの頁).暗いので卓上スタンドの橙色の光を頼りにピントを合わす.なかなか難しかった.一回,飛び立ってしまい,見失った.半泣きになっていると机の上に戻っていた.適当に撮影して毒瓶へ.

 この日は月末でお祭りをしているらしい.新しい月を迎えるお祝いなのかも.宿舎の敷地内にはホールか講堂みたいな施設があり,大音量を発して一晩中盛り上がっていた.


【9月1日】

 モラマンガの街は,自転車式の人力車が多い.アンタナそしてマジュンガと,街によって主力タクシーが違う事が面白かった(のりものの頁).
 セルジュ氏に三形式の名前を尋ねたら,1)人力車"pousse-pousse",2)三輪自転車"bicyclette-pousse",3)三輪自動車"auto-pousse"との事だった.ただこれは無理やり答えてくれた感じがあって,普通はどれも単に「プスプス」で,敢えて言い分ければ,ということのようだ.
 要するに,モラマンガ市街では2ばかりであり,マジュンガでは1と3が多く2は見かけなかった.アンタナでは1,2,3ともほとんど見られない.

 8時前にアンタナへ向けて出発.30分ほど進むと鉄橋のところで渋滞していた.約3キロ先で事故があって不通.復旧のメド立たず.だそうだ.

 待つのはもったいないので,午前中は昨日行ったアンダシベ方面に行くことになった.ラッキー.
 モラマンガまで戻って通過,昨日の昼飯サイト,"Votobe Tsatsaka"で少し採集した.

 昨日と別のノイバラの株で黒いオトシブミ♂を何匹も発見,しかし余裕をこいて撮影しているううちに落下されてしまい採集できない.
 セルジュ氏にも見せてあげたら,小さいけれどなるほどジラーフの仲間だと納得したようだ.目が良いなと褒められた.
 結局2♂追加のみ.


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 アンダシベ方面に左折して駅の前を通り,たぶん鉄道関係の遊休地の森で短時間採集してみた.使われてない線路や,鉄道の橋が落ちた(流された)あとがあった.レールは盗まれていない.
 花が少ないのでチョウ屋さんに不評.天気が良すぎてカラカラだった.ビーティングも収穫なし.日向ぼっこしているチョウを狙うが近づけない.

 駅の集落に近いので電波はあるのだろう,セルジュ氏はアンタナの知人から国道復旧の情報を得ようといろいろやっているようだった.
 マダガスカルの国道は18輪とかの大型トレーラがばんばん走っており,まさに大動脈,物流の主役という感じだった.国道の整備もそれなりに進んでいるように思う.しかし道路状況の情報化に関してはまだまだなのだ.

 根拠は不明だが,そろそろ戻ってみようということになった.11時撤収.昼前にはモラマンガについた.ここで給油中に車中で昼食.
 渋滞で折り返した場所まで行くと問題なく流れている.事故車両がまだ何かやっていた.

 12時半に爬虫類園に到着.きのう教えてもらった道を三々五々峠に向かって進む.筆者は下のほうの微環境混在地域でうろうろした.
 田んぼの水路の美形トンボ,ランタナの花の縄張りを守っているチョウなどを撮影.

 昨日のレンガ作りはまだ続いていて,あまり進捗してないようだ.二時半ころ撤収.アンタナに向かう.

 少し走ると.踏切のところで,なんと警報が鳴った.踏切が作動しているところに遭遇したのは初めてだ.列車が通るぞ!と一同カメラを構えて待つ.しかし,かなり待っても列車は来ない.どうやら踏み切り設備の作動テストらしい.これで10分ほど浪費.

 マダガスカルでは目立ちモノは赤白である.国道の道標は白塗りで赤頭の石碑みたいなものだし,踏切は紅白のシマシマである.


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 アンタナの宿に着いたのは5時ごろ.あいかわらず警戒厳重.今度は角の部屋だった.外に出られないので,窓から乗り合いバスに乗り込む人たちを上から観察した.都心での仕事を終えた人たちが郊外の自宅へ帰る,通勤ラッシュである.
 マダガスカルの乗り合いバスはマイクロバスで,後の扉から乗降する.バスが止まる場所はテキトーだ.停車すると,乗る人々が駆け寄る.が,我先にと乗り込むのではなく降りる人を待っている.要するに乗車の列がそのつどできるので,列の前のほうを確保(→座席確保)するためにダッシュしているのだ.乗車の順位が確定すると,降車完了まで整然と待つのだ.料金はドア係(車掌)が受け取っているのだと思うが,よく分からなかった.


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 あと,ジムニーや日本製の軽自動車が通らないかにつても気にしながら眺めていた.
 マダガスカルの車は,ルノー,ブジョー,シトロエン,とフランス車が多い.大型のトラックではフランス車にまじってメルセデスが食い込んでいるが,メルセデスの乗用車は少ない.フォルクスワーゲンはたまに見る程度で,オペルは激レア,アウディ,BMWは皆無である.
 新しいものでは日本車,中国車も走っている.判別できないアジア製のやつもある.タタかと思ったのもあるが確認できなかった.
 それらに混じって,ジムニーもたまに見かけた.市内を移動中のバスからであるので,カメラを構えて待っていて撮るという頻度ではない.これも激レアである.それらは酷使されている感じではなく,丁寧に使われ,よくメンテナンスされているようだった.
 日本のジムニー本をみていると世界で活躍するジムニー!みたいな記事をよく目にする.各地の過酷な環境に踏み入っているという感じに受け取っていたが,むしろ世界中にマニアがいる,というのが実態かもしれない(サンタナ製ジムニー).マダガスカルではスズキ車は少なくないが三菱のほうが多い.パジェロもジムニーの倍以上いると思う.

 ホテルのPCで調べてみると,アンタナには動植物園がある.プランにも大きく出ている.ホテルのフロントの人に聞くと,2〜3キロだという.道が分かれば歩いていける距離である.WEBで料金を探すと,ツアーが米ドルで51.24$,日本円で\5032.40(車一両,8人以上で一人当たり)と出た.これは高い.
 明日どうするかはバスの中でも話題になっていた,多少はお土産を買いたい派と,多少でも虫探しをしたい派,どっちも,みたいな感じだ.
 夕食の動植物園の話をして,プランを示しておいた.セルジュ氏は自宅泊なので明日相談することになった.


【9月2日】

 米ドルで50$というのは違うようだ.何かのツアーの車つきオプション分だったのか.とにかく,そんなに高くはなく,時間的にもバスで行けそうだ.買い物をする時間もあるようで,一同満足.そうすることにした.

 8時ごろ出発,まず初日にバオバブを見に行ったショッピングセンターに寄る.8時40分,開いてるのか? 開いていた.なかりハイソ向けの店だが,いろんな品揃えを見た.ネイチャーものの書籍をみる.
 魚屋さんもあって,お寿司や醤油鯛がない事を確認.ゲーム機コーナーには3DS本体はなく,DSiとDSiXLがあった.なぜか3DS用のマリオカート用ハンドルが売られていた.PSVitaはあった.
 地図とTシャツを購入.手持ちのアリアリが底をついていたので,セルジュ氏に立て替えてもらい,バスの中でアリアリとドルを混ぜて払った.

 バスは行きも帰りもアンタナの中心部を通った.起伏の多い地形,岩壁にアンタナナリブと書かれていた.大きな池の真ん中に金色の像.まったく理解していない.帰った今も調べていない.たしかにあそこに行ってそれを見たのだが.

 動植物園には10時前に到着.入り口には遠足か何かで来ている人たちがいた.ちょっとよそ行きの服装なのかもと思うと,たしかにそうだ.

 ここでは団体行動とした.園内の説明はセルジュ氏にとってはルーチンみたいで,どんどん説明してくれた.センダン,タビビトノキ,霊長類の系統,民族による埋葬方法の違い,希少鳥類一羽のために飛行機を飛ばして問題になった件…

 園内の植物に虫は少なかったが,チョウはそこそこ飛んでいた.水辺にはトンボもいた.虫用のカメラを下げていたが,一枚も撮れず.

 出入り口のところにお土産屋があり,希望のものがみつかった人もいて大満足だった.

 バスは何度か見た立派なラグビー場の横を通って,川沿いのおみやげ物市場,11時半着.同じような平たい店が延々と並んでいる.真ん中あたりに停車した.

 お金はもう5000Arちょいしかない.とりあえず近い店に入ってみると,虫の玉があった.プラスチックに封入したもので,標本ではなくゲームのコマである.将棋がチェスみたいなもののようだ.
 セットかもしれないが,その中のジラーフ・ビートルのやつを単品で所望.値段を書いてもらったら30000Ar.値切っても10000Ar.ともかくぜんぜん足りない.財布の中のアリアリ全額をはたいたら,それで納得してくれた.本当はもっと値切れたかもしれない.
 お土産屋にも仁義があるらしく,車から降りて最初の店に入るまでは,他の店の売り子はコンタクトしてこない.最初の店を出た瞬間からは自由なようで,次々とコレはどうかコレはどうかと言ってくる.お金がない事を示して拒絶.

 止まっている自動車を鑑賞していると,ひときわ存在感のあるトラックが止まった.近寄って撮影して良いか聞くと,もちろんOKである.フロントグリルに「解放」と書いてある.中国製のやつだ(解放).運転手や助手などが,何と書いてあるのか? と聞いているようだ.シネだと言っている.
 そうそうこの車は中国製で,私はジャポネだけどだいたい読めるのだ.「解放」はリリースだと言ったが伝わったかどうか.「第一汽車製造廠」も説明,「汽車」がアウトモビルだと言った部分は分かってくれたと確信した.
 撮影して説明しているうちに,ポケットに戻したカメラを抜き取るやつがいた(らしい).それに気づかずにいたら.別の人が,こいつからはあかんやろ,みたいに嗜めつつ,これはお前のカメラだろと渡してくれた.筆者はカモから友達に昇格したらしい.恐いやら嬉しいやら.

 市場では客が何を買ったかは瞬時に伝わるらしく,他店の人が一回り大きいジラーフ玉を持ってきた.米ドルだと10$だという.けっきょくコレも購入.

 虫を追いかけているときも待ち伏せているときも対峙しているときも,いろいろと試行錯誤だったり駆け引きだったりいろんな事が起こるのだが,記憶としての再生がむつかしい.これと比べると人とのやり取りはけっこう記憶をたどり易いなと思う.これは数値が具体的なことや,自分がこうしてリアクションがこうで,という因果関係の連続として整理しやすいからだろうと,今これを書いていて思った.

 昼前のアンタナは渋滞が発生していた.合流は整然と行われていて,行儀の悪い車はほとんどいない.まだ運転者の大半がプロだからだと思う.
 バスが小さな曲がりくねった路地に上手く突っ込んで,昼食のレストランについた.12時半.さっきまでと別世界みたいな風景である.屋根に蔓性植物を這わせ,花盛りになっている.しかしこれは違うなと思った.


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 お金がゼロなので飲み物を買えなかった.

 藤田氏はあい変らず地面をはうように飛ぶシジミチョウを見分けて居られる.たしかにカタバミにシジミがいるのだが,結局撮れず.マダガスカル最後の一コマかなと思いつつ,そのカタバミを撮影した.


PA_F4477 [DL]

 空港に着いて高橋氏も元気に合流.入院中は付き添いの人の日本語がうまく,心強かったとの事.
 持ち込み手荷物を分けてペットボトルの水を放棄,荷物の手続きに並んだ.ところが列が動かない.コンピュータシステムが壊れ,手でやってるらしい.
 列は少しずつ進んでいるが,この調子だと定時の出発は無理だ.特に心配なのは成田組で,バンコックでの乗り継ぎの時間がもともと2時間しかない.大丈夫か?
 関空行きは多少余裕がある.いっそのこと航空会社側の不手際で乗継ができず,無料でバンコックで一泊とかだったら良いのにな,とか妄想.
 水がないのが苦痛だが,待つしかない.乗客はほとんど外国人旅行者だ.地元の人のようでも混血っぽかったりする.中国系の人が家族との別れに涙している.

 機内に入ってからも困った状態だった.席の指定に従わず,テキトーに座った人が多く,遅く乗り込んだ人が並んで座れないとかの問題が発生.人数のチェックに手間取っているようだった.
 結局出発は16:25の予定が18:45になった.2時間20分遅れ.19:00ごろ離陸.


【9月3日】

 北半球にもどったのも日付が変わったのも気づかず.

 バンコックでは成田行きの人たちの一括移動する手配ができていたようで,降りたとたん別扱いだった.間に合うようだ.
 筆者を含め関空行きはしばし散策.残りのドルを両替してビールとおつまみを購入した."Singha"と"Tiger"を飲み比べたがさして変らず.前者がちょっと薄いか.搭乗待ちの所のPCで神戸の天気を見ると雷雨となっていた.


DSCr2970 [DL]

 関空行きのタイ航空はエアバス(Airbus A330-300)だった.機内の装備は往路のジャンボと同じだと思う.無事関空に到着し3人と別れ,スマホをオン.

 空港バスは六甲アイランドに寄るやつだった.三宮で降りると少雨.


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